東洋医学シリーズ -整体について-
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| 外科 小島 善詞 |
| 前回は東洋医学の中でも漢方薬について説明しましたが、今回は整体について話したいと思います。 |
はじめに
「整体」という言葉に対して、どういうイメージをお持ちでしょうか。
「あんなもの効かない」「高価」「信頼できない」などが多いのではないでしょうか。事実、「整体」と言われる業界というものは、まさに玉石混淆の世界でありまして、なかには1週間ほどのセミナーに参加しただけで開業している方もあります。
その中にはまったく医学知識を持ち合わせていない方もあり、非常に危ないところもあるのが現実ではないかと思います。また、整体、カイロプラクティック、オステオパシー、柔道整復など色々と方法も全然異なる方法を行っているのを、一括して整体と言っていたりもします。だからといって整体そのものを価値のないものと考えることは早計ではないでしょうか。
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整体とは
整体も長い歴史を有しておりますが、カイロプラクティックは高々数十年前にアメリカの脳外科医が始めた脊椎矯正法を、技師が模倣して広めたことに始まります。だから効果自体も一定していませんし、あまり経験や技術は必要ないのですが、本当の「整体」は人体の不思議を東洋医学的に極めた身体調整法です。すなわち、人の身体を内部の内臓系と外部の運動系に分けて考えた時、内外の機能が完全に営まれるためには、どの1つの系統をも切り離して考えてはならないのです。全身は誇張して言うならば無数の細胞が、体液に浸されて引き付けあった1つの塊で、1つの有機体でありますから、各部局所は必ず相関の約束のもとに定められているのです。ですから、ある細胞群だけが病み、また各器官がバラバラに病むということもありえないと考えるわけです。
現代医学が置き忘れて、等閑視している分野に運動系があり、これが健康と疾病に案外、重大な意義を持っているのではないでしょうか。運動系が歪む時、そこにストレスがおこります。そのストレスは次々と伝播して身体の機能異常となって現れて、神経系・内臓系の機能障害が成立することもあります。この時、外の運動系に歪みを発見して調整すると、それらの機能が回復するのです。整体はこうした東洋医学の物療システムとして位置付けられているのです。
例えば、長年の疲労で家が歪んだが為に障子が軋んで閉まらなくなった家庭があったとしましょう。それに対して西洋医学は障子に油を差したり、桟を鉋で削ったりします。カイロは腕力で傾いた家をバキバキと立て直します。東洋医学は柱を丈夫にしたり、基礎を改良したりして、家の歪みを基礎から改善させようとします。こういった違いがあります。
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運動系の秘密 運動系における異常、すなわちアンバランスが生じた時には、軟組織、主として筋肉の緊張異常と、関節によって連結されている骨格の硬組織には配列の異常とが同時に起きているのでありまして、それは脊柱のみならず、四肢、肩甲、骨盤、頭蓋においてもみられるのです。この異常に対処する方法として、固定・牽引療法、筋膜切開手術、神経ブロックなどが行われている程度でありまして、概して西洋医学は運動系に対して無関心です。
そこで、面白い話をいたしましょう。運動系の生理機能には面白い秘密があるのです。運動系には、全系統的に相関連動装置になっているということです。試しに、足の親指を動かしてみて下さい。抵抗を与えない場合は、親指だけが動きますね。でも、親指が動きにくいように抵抗を加えてみて下さい。どうですか、チカラが入るにつれて足首から腰、脊柱、手の指先、頸、顔面の筋肉まで、反対側すらも動いてきませんか。そうです。整体はこの原理を応用しているのです。この連動の原理を応用すると、足や手の指の運動によって、脊椎、肩甲の配列異常まで矯正しうることが可能となるのであります。
もう1つ、呼吸の話です。みなさんが歩く時、呼吸は無意識で行っていますね。でも、ある目的を持った短い動作、またはチカラの入った動作は、必ず呼気でやるか、または吸気を止めてされているはずです。もし吸気で動作したら身体が崩れてしまいます。武道の立会で隙を衝かれるのは、必ず吸気の瞬間です。昔から調息法などと言いますが、運動と呼吸を協調させなければ身体はうまく動作しないようになっているのです。そして、整体で筋肉系のアンバランスを調整する時も、呼吸を利用しています。目的をもって、緊張させたい筋肉には吸気時に、弛緩させたい時には呼気時に刺激を加えているのです。
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そして機能回復へ
以上のような諸原則を理解して運動系に生じた歪みを整復することに成功すれば、まず異常感覚や運動制限が解消します。そして次いで歪みに関連して生じていた内臓あるいは神経系の機能障害が回復に向かい始めます。最後に、それらの器質的障害も再生または代償によってある程度治癒に向かいはじめるといった経過をとります。
このように、東洋医学の治療法は、物療(整体など)も薬療(漢方薬など)もかなり高い程度に運動系の軟部組織の歪みに着目して組成されているのがおわかりになるでしょう。西洋医学ではこの方面に無関心であるために盲点の1つになっているのです。
外が歪めば、内に故障がおこってくる。これに着目している人はほとんどいないのが現代医学です。運動系自身は連鎖運動装置になっているから、その力学をよく研究して、その動静両面に現れている歪みを治すのが物療の目的です。歪みなき運動系を有する人体に病なし。外と内の間の連関のメカニズムを臨床応用したものが「整体」であると言えます。
鎮痛剤で痛み、そのものをごまかしても、この歪みを治さないことには、痛みの原因を除去したことにはならず、むしろ痛みを無理に抑えて運動を続けることによって、患部はさらに悪化するという結果を招きます。
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当院の整体法
当院では、いわゆる無痛整体法を取り入れています。「無痛」というのは、カイロプラクティックのように背骨をボキボキ言わせたり、無理に牽引したりするのではなく、身体の筋肉のバランスを調整して歪みを正していこうとする方法です。
上で述べましたように、人体とは誠に不思議なシステムです。足の親指の動きだけで、全身のバランスを調整することが可能なのです。当院の方法でも、痛みを与えることなく、手足の筋肉のバランスを調整することで体の歪みを調整し、痛みを取っていこうとするものです。だから、急性の筋肉のバランスの異常の場合は一回で治ってしまう場合もありますが、関節の変形や脊椎のヘルニアなどの器質的な障害を伴っている場合には、何回も調整を行わないと痛みが取れてこない場合もあるのです。この調整回数は人によって異なりますが、数回から十数回にわたる場合もありますから、気長にかまえていただく必要があります。
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整形外科は必要ないのでしょうか
身体が歪んでいるからといっても骨折やケガなど、外から加わった力で体を痛めた時は整形外科で治療を受けるべきです。
しかし、変形性膝関節症、ヘルニア、五十肩といった病気は外傷でありません。体の内からおこる病気です。こういった病気は整形外科で診察を受けていただき、手術などの治療が必要かどうかを診てもらってください。もし、そういった治療が必要でないといわれたら、整体や漢方薬などの治療が身体の内部から治療するという意味でおすすめです。なぜなら、整形外科でもこういった病気に対する治療といえば痛み止めの薬、湿布、温熱療法くらいしかないからなのです。
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自分で出来る予防法
ストレッチをしたり運動したりすることは体の歪みを予防するのに役立ちます。ストレッチのなかでも「真向法」という体操が良いのではないかと思います。基本動作が4通りしかなく、狭い場所でもできるうえに高齢者でも簡単に始めることができるからです。外科外来にパンフレットがおいてありますので、一度声をかけてみてください。真向法の本によると、90歳からでも始められるとのことです。関節を伸ばす方法はもちろん真向法だけではありません。ヨーガ、ストレッチ体操などいろいろあります。ラジオ体操でもある程度のストレッチ効果はあるはずです。自分にあった簡単なものを選んでください。あまり複雑なものや時間のかかる方法は長く続きません。
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